春秋左氏伝に「吾以靖国也」(吾以つて国を靖んずるなり)の言葉がある。明治天皇は、戊辰戦争で戦死した長州人を慰霊するために東京招魂社を創建されたが、これが今の靖国神社である。後に先の言葉を典拠とし「靖国神社」と変名した。なお日本最初の招魂社は、山口県下関市にある現桜山神社で、高杉晋作が殉国の志士の神霊を祀るために創建した。ということで、長州人である安倍晋三は、これからも参拝するね。当然。
2006年8月16日水曜日
2006年8月15日火曜日
西施
最近、「小説 孫子の兵法・・・鄭 飛石」というのを読んだ。勿論、呉越の争いを孫武と伍子胥を中心に描いている。作家は、韓国人だ。その中で登場する「傾国の美女 西施」について書きたい。呼び名は「沈魚美人」。魚が、西施を見てその美しさに泳ぐことを忘れてしまい沈んだということからきているらしい。
中国古代四代美人の一人だ。他の三名は、まず言わずと知れた「楊貴妃」。唐時代700年代。唐の六代皇帝・玄宗がその美貌にほれて18人目の息子の嫁を召し上げて自分の妃にした。玄宗皇帝61歳、楊貴妃は21歳。時に当時世界で最大の都市だった長安は牡丹の花が盛りだったと言う。呼び名を「落花美人」という。花が、楊貴妃の前では、その美しさに敵わず恥ずかさのあまり花びらを落としてしまうということらしい。玄宗皇帝が安録山の乱に敗れた時、楊貴妃は密かに中国を脱出して日本に漂流したといわれる。山口県油谷町に楊貴妃の墓がある。
次は、三国志に登場する「貂嬋」。三国時代180年ごろ。あの三国志演義を彩る美女歌姫。正史にはその名を見つけることが出来ない。後漢の大官・王允(おういん)を助けようと横暴を尽くす二人の武将・薫卓とその養子・呂布(りょうふ)の間に入り三角関係をつくらせる。これを”連環の計”という。この計略で貂嬋の虜になった呂布は薫卓を殺してしまう。使命を果たした後、自分の命を絶つ。別名「閉月美人」。月が、恥ずかしさのあまり雲に隠れてしまうことらしい。三番目は、「王昭君」。前漢朝末期紀元前30年ごろ。召し上げられるの嫌い似顔絵師に偽って「醜女」のように描かせた。皇帝は匈奴との和睦のために一番醜女を差し出すこととし、似顔絵から王昭君を選ぶ。皇帝は匈奴の王に与える前に王昭君に初めて対面するが彼女は後宮一の美女だった。しかしもうどうすることも出来ず、悔しがって匈奴の妃として与えたという。呼び名は「落雁美人」。雁がその美しさに見とれて落ちてしまったことからきている。
そして、悲劇の美女、私がもっともお気に入りなのが「西施」。紀元前の人。その美貌度、知名度は中国ではあの楊貴妃をしのぐ。越王・句践(こうせん)は歌舞音曲を教えこみ、呉王・夫差に献上として嫁がす。好色で快楽的な夫差はその美貌におぼれ、ついに国を滅ぼす。芭蕉は奥の細道で「象潟や雨に西施がねぶの花」と詠っている。また、中国に「西湖」という美しい湖があるが、北宋の詩人蘇東波がこの湖をこよなく愛し、その詩の中で中国古代の美女西施にたとえて「西子湖」と詠んだことから、西湖と呼ばれるようになった。国を滅ぶす美女は中国には多く登場する。妹喜(ばっき),妲己(だっき),褒[女以](ほうじ),驪姫(りき)などは己の美貌をもって君主に取り入り,ふるまったために国を傾けた悪女である。つまり傾国=悪女とみてとることができるが,西施は呉王夫差を堕落させるための句践,范蠡の計略の道具として利用されていたと言える。その点で自らの意思で傾国させたのではないところが,彼女を悪女というイメージから遠ざけ,生きる目的のない悲愁さえ誘うように思える 。それ故、哀れな最期をむかえたことと,男に利用された薄幸の美女としての西施に同情を禁じえない。
李白は「蘇台覧古」という詩を書いています。
旧苑荒台楊柳新 旧苑(キュウエン)荒台(コウダイ) 楊柳新(アラタ)なり
菱歌清唱不勝春 菱歌(リョウカ)清唱 春に勝(タ)えず
只今惟有江西月 只今惟有り 江西(コウセイ)の月
曾照呉王宮裏人 曾つて照らす呉王宮裏の人
(意味) 旧い庭園、荒れた楼台には、楊柳が芽を吹いている。菱の実を採る娘達の清らかな歌声が傷春の思いをかきたてる。今も変わらぬものは川の西空に輝く月だけ。この月こそ、その昔呉王の宮殿の内の人、西施を照らした月なのだ。
2006年8月12日土曜日
銀山温泉
2006年8月11日金曜日
家族旅行~山形1泊
カエサルを撃て
佐藤賢一「カエサルを撃て」を読んだ。本書の舞台となるのは、8年に渡るカエサルのガリア戦役のほぼ終局期に勃発したガリアの総蜂起。ガリア側にたった戦記としての物語の展開。定説にとらわれない想像力を駆動させて、全ガリアの命運を決するこの一大決戦をウェルトキンゲトリスクとカエサルとの一個の人間同士の争いとして描きだしている。ガリア制覇の緒から対ポンペイウス戦役を征するまでのあいだ、ほぼ負けるということを知らなかった常勝カエサルに地を舐めさせた稀有の好敵手ウェルトキンゲトリスクとは、いったいどんな人物だったのか。彗星のごとく現れ、文字通り全ガリアの期待の星となったこの青年に大きく軸足を置きながら、佐藤賢一版「ガリア戦記」は展開する。中年となったカエサルと青年ウェルトキンゲトリスクの攻防。ハラハラしながら一機に読み終えた。過去の栄光を持つカエサルが、目の前にある「戦闘」に目覚めたときから、突然に面白くなります。お勧めです。