2006年10月19日木曜日

背教者 ユリアヌス

先日、すーさん先輩と久しぶりに飲む機会があった。すーさんも大の読書家だ。私のように凝り性ではないので、いろんな書籍を読む。前述の「大聖堂」もとっくに読んでいた。そんな、すーさんの好きな本が「背教者 ユリアヌス」 辻邦生 著である。 本棚をさぐって久しぶりにぱらぱらとめくってみる。小説冒頭「かの人を我に語れ、ムーサよ」で始まるこの小説は、「なんという地上の美しさであろう」というユリアヌスの最後の言葉で終わる。背教者という蔑称でキリスト教徒から呼ばれているために、あまり知られていない皇帝だ。在位も非常に短い。当然、ほとんどの日本人は、この辻邦生の小説でその存在を知る。しかし彼がもっと長く生きていたら今のキリスト教世界は大きく変わっていたかもしれない。そしてこの当時の宮廷政治は今の腐った官僚政治にも通じ、非常に見苦しいものだ。その為ユリアヌスの純粋な情熱だけが余計輝いてみえる。皇帝になってからも、学塾での学友たちとの親交が続き、庶民の心をもったまま傲慢にならずに、学んだ哲学の理想を現実に実現しようと労苦した皇帝ユリアヌスの姿は、何らかの蛮行を治世の間に行ってきた従来のローマ皇帝のイメージを一変させる。だから読んでいていつのまにかユリアヌスを一生懸命応援してしまうのだ。この本を読んだのは、20代の頃だと思うが、キリスト教徒のことを、同じように「ガラリヤ人がぁ」と呼んでいたのを思い出す。(すぐに感化される)まるで大河ドラマのような小説である。上中下と長い本が、私もお勧めである。



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