藤本ひとみ「皇帝ナポレオン」読み終える。産経新聞に「ナポレオンの夜」と題して連載され(2001年11月~2003年4月)たものらしい。上下巻と分厚く読み応えがあると思ったので手にした。
一度退位したナポレオンがエルバ島を脱出し、かの「百日天下」へ向かうところから話は始まる。
歓声のこだまするパリで若き新聞記者・モンデールがナポレオンを新聞の記事にするため、様々な立場の人にインタビューを重ね、人間のあらゆる欲望を一身に背負い、ヨーロッパを駆け抜けたナポレオンの実像と探り出す。
それは野心、比類なき人心掌握術、天賦の戦略の才、飽くなき性への欲求…。
フランスをそしてヨーロッパを戦争に巻き込んだナポレオンを、告発するモンデールであるが、最後には独裁者であっても、混乱のフランスを救えたのは彼しかいないこと、偉大な人物であることに気づいていく。出自、夢、恋、結婚、孤独、失意、再起、終焉。ナポレオンの生涯は並外れてスケールが大きかったが、実は、人間一人ひとりに与えられている人生そのものを、ひたすらに生きただけなのだ。印象に残る言葉がある。
「私の胸にはいつも、現状がすべてだという気持があります。それ以外を考えても、望んでも、時間と労力の無駄だという気持が。だから自分が失ったもの、自分から欠け落ちていったものについては、ほとんど顧みません。次への対策が立った瞬間に、私は痛手から回復しています」 これこそが、ナポレオンの不屈さの原動力なのか。納得。
歴史公証はおいといて、人間ナポレオンとしてのあらゆる面を浮き彫りにした点で実に面白く読むことができた。
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