安倍龍太郎著「浄土の帝」を読む。源頼朝をして「日本国第一の大天狗」と言わしめた、歴代天皇の中でもぐんを抜いて悪名高い「後白河天皇(法皇)」を意外にも心の王たろうとし、朝家の理想のあり方を求めた人物として描く異色の小説であった。日本国の二大怨霊の一人 崇徳院を兄にもち、父 鳥羽上皇の院政の中、中継ぎとして天皇に登り、骨肉の争いと貴族の権力抗争に巻き込まれながらも自身の信ずる道を着々と歩く後白河上皇。保元・平治の乱の時代だ。武家が台頭する中、もがきながらも強く生きる姿が痛ましくもある。悪役のイメージしかない後白河上皇の、知られざる一面を描く面白い作品であった。
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