風雲急を告げる幕末の長州藩。周防灘の漁師のせがれ直人は、父と巨大なホホジロ鮫を狩り、倒幕の吉兆として士分を許される。久坂玄瑞と交わり、尊皇攘夷の流れに加わっていく。高杉晋作を追いつめ、そして坂本龍馬、大村益次郎を斬殺。幕末最強の刺客、長州の切り札となった彼は、回天の動乱を駈けぬける!新政府で栄達した者たちが歴史の闇に葬った神代直人。その苛烈な生涯に肉迫した異色長篇。
幕末、長州・薩摩・土佐に各々、人斬りと異名をとる人物がいる。長州は、この小説の主人公である「神代直人(こうじろ)」、薩摩の後の桐野利秋こと中村半次郎、そして土佐には、岡田以蔵がいる。主人公 神代直人だが、大村益次郎を襲撃したというのは事実である。そこから、龍馬の犯人も彼であるという設定で小説は組み立てられる。私は、薩摩陰謀説の立場なのでそれはおいといて、小説としては非常に読み応えのある作品であった。久坂玄瑞に対する思い、高杉晋作へ対する嫉妬、山形狂介への侮蔑を交え、テロリストとして一途に駆け抜ける神代、そして味付けとして不思議な恋心も添える。長州人としては実に面白い小説であった。
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