服部真澄著「最勝王」上・下巻を読む。平城京が廃され、長岡京さらには平安京へと都が移っていった頃。若き日の空海こと 讃岐ではちょっとした名士の子であった佐伯真魚は、勉学のために京に上るその途中で難波の四天王寺を訪れる。そして謎の人物 赤麻呂と出逢う。この男が本小説のサスペンスの鍵を握る。赤麻呂と空海は表裏一体の存
在。最後は空海に収斂したが、青年期の教海と壮年の空海は同一人物とは思えないほど変貌を遂げている。宇宙の真理を見極め、唐の高僧から秘術を伝授される
という僧としての完成と同時に、赤麻呂流の世間智を手に入れたのである。唐から帰朝した空海は、秘密宗の奥義を得て、各所で講説を続ける。一方、謀叛の罪に問われた伊予親王は、幽閉ののち自害する。前半生の記
憶のなかに、殺人を犯す自分を見る空海。政争渦巻く地上で、生死の呪縛を解き、生滅を超えゆく道への鍵は開かれるのか。
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