八木荘司著「遥かなる大和 上・下」を読む。[E:book]改革を推進する聖徳太子の期待を背負い、遣隋使に加わった留学生・高向玄理と南淵請安は、隋都で大使・小野妹子から思いがけない任務を命じられる。大臣・蘇我馬子の強い意向で随行していた通事(通訳)・鞍作福利が、隋帝の国書を持って失踪したのだ。高句麗侵略の準備に騒然とする隋で、福利の行方を追うことになった二人が見たのは、帝国の疲弊した現実だった…。
大和での、蘇我馬子と聖徳太子の外交路線の対立を軸として、陰湿な政治の舞台裏を描いて見せる。また中国大陸では、煬帝の対高句麗戦争に端を発し、楊玄感(ようげんかん)の反乱、李密(りみつ)の華北制圧、李淵(りえん)親子の挙兵、唐王朝の成立を描く。(隋唐演義のように) 小説としては、臨場感があり優れた作品であった。しかし、その内容は、ちょっと受け入れがたいもので歴史としては見るべきでない作品であろう。小生、そもそも蘇我馬子と聖徳太子の外交路線の対立などないと思っているし、聖徳太子自身も存在していないと思っているからだ。八木氏の「古代からの伝言」を記紀の勉強のために読んだが、八木氏は記紀にそって忠実に物語を構築していくなかでフィクションをデフォルメしているのだ。残念ながら我が「大和」の古代の真実は「書(文字)」が無いためにわからないことが多すぎる。
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