熊谷達也著「荒蝦夷」「まほろばの疾風」2冊、まさしく疾風のごとく読み終える。この2冊には、伊治呰麻呂(イジノアザマロ)がともに登場するが、かなり違ったキャラクターとして描かれているのがおもしろい。高橋克彦の「火怨」との対比でアテルイを見るのもなかなか味なものである。書いた順は逆だが、時代としては、「荒蝦夷」が先となる。
[E:book] 8世紀の陸奥国。大和朝廷に敢然と牙をむいたひとりの荒蝦夷がいた。その名は呰麻呂。彼はいったい何を守り、何のために闘ったのか。新直木賞作家・熊谷達也が、蝦夷の英雄・阿弖流為と坂上田村麻呂の戦いに先立って蜂起した服わざる者たちの大いなる神話的世界を描く、待望の古代東北歴史ロマン。
そして「まほろばの疾風(かぜ)」へつづく。
[E:book] 同じく8世紀末、東北には、大和朝廷に服従しない誇り高い人々がいた。かれら蝦夷は農耕のために土地に縛られるのではなく、森の恵みを受け大自然と共生しながら自由に暮らしていた。だが、その平和も大和軍の侵攻によって破られる。そして、一人の男が蝦夷の独立を賭け、強大な侵略者に敢然と戦いを挑んだ。彼の名はアテルイ。北の森を疾風のように駆け抜けた英雄の生涯を描く壮大な叙事詩。
熊谷氏のアテルイは英雄然と描くのではなく、人間味のある一人の弱い男として書いているのがこれまた新鮮だ。またモレをアテルイの懐刀ではなく、いち村を統率する大巫女で、女性として描いているのもおもしろい。とにかく両者の蝦夷のありようは全く違ったので高橋の名作に感動したにもかかわらず、素直に本書も受け入れられたのだろう。是非ご一読を!
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