2007年3月7日水曜日

荀彧

Isbn9784569667959 PHP文庫から出ている「荀彧」という本を読んだ。荀彧なくして曹操なしと謳われた魏の名軍師である。最期は、曹操と距離ができ、もはや不必要とされていると感じ、毒を仰ぎ死んだというのが定説(空の壷の話)であるが、本書は、そのように終わらせていない。また、漢室を重んじていたとされる説をも覆がえしている。むしろ、曹操に早く、漢四百年の重みを飛び越えよと箴言する姿がそこにある。正統三国志ファンには眉をひそめそうな展開だが、そういう作者独特の解読もおもしろい。さて、本書とは少し関係ないが、荀彧で一番の軍師としての名場面は、なんといっても曹操へ勇気づけの場面であろうか。



彧則見太祖。太祖乃以紹書示彧、曰、今将討不義而力不敵、如何。



彧曰、古之成敗者、誠有其才、雖弱必強。荀非其人、雖強易弱。



劉・項之存亡、足以観矣。



彧すなわち太祖に見まう。太祖すなわち紹の書を以て彧に示して曰く、



「今、不義を討たんとするも、力、敵せず、如何せん」彧曰く、



「古の成敗は、誠の其の才有れば、弱と雖も必ず強く、荀しくも其の人に



非されば、強と雖も弱め易し。劉・項の存亡、以て観るに足る矣。



昔から勝敗は人しだい。トップに其れだけの力(力量)があれば、弱くても必ず強大になる。逆にトップに人を得ていなければ、いかに強くても最期は弱くなる。これは、劉邦と項羽を見ればわかることだと、袁紹と曹操の人を比較して、袁紹は曹操の敵ではないと、弱音を吐く曹操を勇気づける。この言葉を得て、曹操は袁紹との対決を決意するにいたる。誠に王佐のすぐれた直言といえよう。





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