2009年9月28日月曜日

火の路

Photo2松本清張著「火の路」を読む。1970年代の作品だ。飛鳥、奈良時代の日本に古代ペルシア文明がかなり影響を与えたと見る、新進の考古学者・高須通子が、イランを訪ねる物語だった。奈良県飛鳥地方には酒船石(さかふねいし)はじめ猿石、益田岩船(ますだのいわふね)といった謎の石造物があり、清張 は飛鳥時代に渡来したペルシア人が遺したとの考えを高須通子を通して語る。



シルクロードを、商人として東奔西走したペルシャ人により古代ペルシャの広い信仰を集めたゾロアスター教(拝教)の聖なる火と、火が発する言葉が、日本の仏教とともにはいってきたのだ。人を陶酔させる薬草種ハオマ酒を飲んで、神との会話を可能にする「ハオマの密議」というゾロアスター教の儀式も、今も日本の多くの寺に残る密教の護摩焚きの火として残されている。また仏閣に多く見られる蓮の花が放射した模様は、ゾロアスター教の神太陽の放射図を模して仏教の国に入って来たもののようだ。遠い記憶を辿ると、ペルシャと飛鳥を結ぶ路があった。火と火を結ぶ路、その路を松本清張は「火の路」と名付けた。



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