2013年7月6日土曜日

言霊 大伴家持伝

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篠崎紘一著「言霊 大伴家持伝」を読む。



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古来、武をもって朝廷に仕えてきた大伴氏に、2代続けて優れた歌人当主が現れた。「武」ではなく、「言の葉」で世を鎮めようとした壮大な試みが幕を開ける!「万葉集」編纂の真実。衝撃の古代史小説。







平城京の時代を通して戦われた政争。



大伴家持は、常にその渦中にあった。


父の旅人は長屋王との関連を問われて大宰府に左遷。


奈良麻呂の変では従兄弟の古麻呂が拷問死している。


家持自身藤原仲麻呂暗殺計画への関与を問われて左遷され、さらに藤原百川に担がれた桓武が即位すると氷上川継の乱への関与を問われて再び左遷の憂き目に合う。


それでも家持は、藤原氏、さらには桓武の抵抗勢力として時代を生き抜いた。称徳天皇も、井上内親王も、他戸皇太子も、早良皇太弟も、家持は守ることは出来なかった。それでも常に、権力者に対する最大の抵抗勢力として存在し続けた。守れなかった者達、怨みを飲んで死んでいった者達の側に身を起き続けた。


万葉集にはそれらの者達の歌が、多く収録されている。天皇、貴族各層はもちろん、庶民、女人の歌までが納められ、さらには罪人の歌までが収録されているのである。その意味では古今東西に唯一の歌集であろうし、明らかに鎮魂の歌集である。


歌に通じ、言霊に通じ、あらぬ罪で葬り去られた者の怨みに寄り添ってきた者。やはり、大伴家持以外には考えられない。


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